Japanese Food Market Insights

抹茶・ゆず・食感系ドリンクが示す米国の小さな贅沢需要

作成者: Kazuhito Ito|2026/07/29 6:29:09

米国の外食・小売市場では、消費者が高額な外食を控えながらも、数ドルから十数ドルで気分を変えられる「小さな贅沢」を求める動きが強まっています。Food & Wine2026726日、ファストフード各社がリフレッシャー、クリームを重ねたソーダ、ボバやジェリー入りの飲料に投資していると報じました。また、同じ週、Eaterはニューヨークのイベントでマルちゃんの巨大ラーメン展示やShota Nakajima氏による日韓米を着想源にしたラーメン試食が行われたこと、さらに、Eater NYは抹茶、ゆず、海苔の「日本風タコス」を出すカフェの開業を取り上げています。これらは単なる流行語ではなく、日本産原料や日本的な味の設計を、飲料・デザート・軽食の入口商品として提案できるサインとなっています。

 

目次

  1. 今週の報道で確認できる需要シグナル
  2. なぜ飲料は日本食輸入の入口になりやすいのか
  3. 抹茶・ゆず・茶系フレーバーの商機
  4. 食感とカスタマイズが作る購買理由
  5. 輸入事業者が準備すべき商品設計と営業資料
  6. 具体的な次のアクション

 

1. 今週の報道で確認できる需要シグナル

Food & Wineの記事が示したポイントは、ファストフードの来店動機が従来のバーガーやフライなどのメイン商品から、個別化された飲料へ広がっていることです。同記事では、フルーツ系リフレッシャーやクリーム、炭酸、フルーツジェリーのような食感素材入り飲料が若年層の「自分仕様」の楽しみとして広がっていると説明しています。さらに、手頃な価格で気分転換できる点が経済的な不安が残るこのタイミングでも支持されやすいということです。

これは、日本食品の輸入を考える企業にとって非常に重要な点です。

抹茶・ほうじ茶・玄米茶・ゆず・梅・しそ・黒蜜・きなこなどの素材、また、寒天・わらび餅などの食感は、米国の飲料・デザート市場で「新しいが理解しやすい」体験を作ってくれる食材となります。

続いて、EaterのWorld's Fare記事は、サッカーと食のイベントに数千人が集まり、世界各地の料理を横断的に楽しむ場で、マルちゃんのラーメン演出やShota Nakajima氏のラーメン試食が参加者の体験コンテンツになったと報じています。この出来事は、ラーメンが単なる食事ではなく、写真に撮りやすく、イベント化しやすく、投票や食べ比べにも向く「参加型コンテンツ」として機能していることを示します。輸入事業者は商品を卸すだけでなく、試飲・試食・限定メニュー・投票企画・ペアリング提案まで含めた販売支援が必要になることが読み解けます。

さらに、Eater NYの新店まとめでは、ロウアーイーストサイドのOn Labが、抹茶やコーヒーにジャスミン・ゆず・グアバのような香味を組み合わせ、さらに海苔のシェルにカニカマやうなぎを入れる「日本風タコス」でSNS上の注目を集めていると紹介されました。これは、日本食が伝統的な提供形式だけでなく、カフェ、夜営業の軽食、スナック、持ち歩き商品、SNSで説明しやすいハイブリッド商品へ拡張していることを示す好例です。輸入企業にとっては、抹茶粉末やゆず果汁だけでなく、海苔シート、ふりかけ、うなぎ風味のたれ、香味シロップ、茶ベースの濃縮液、トッピング素材などを組み合わせて提案する余地があります。

 

2. なぜ飲料は日本食輸入の入口になりやすいのか

飲料は、日本食の認知を広げる入口として非常に扱いやすいカテゴリーです。第一に、消費者の心理的ハードルが低いことが挙げられます。寿司やラーメンのように食事全体を選ぶ必要がなく、コーヒーショップ、ベーカリー、ファストカジュアル、スーパーのチルド棚、コンビニ型店舗などで「今日はこれを買ってみよう」と試しやすいからです。第二に、飲料はメニュー開発の自由度が高いことが挙げられます。抹茶ラテ、ゆずソーダ、ほうじ茶ミルク、梅スパークリング、玄米茶レモネードのように、既存の米国フォーマットに日本の味を重ねることができます。第三に、原料の使い回しが効くことが挙げられます。抹茶はドリンク、焼き菓子、アイス、朝食メニューに転用でき、ゆずはドリンク、ドレッシング、カクテル、デザート、シーフードメニューに広げることができます。

また、飲料はオペレーション面でも導入しやすいカテゴリーです。店舗側は、既存のドリンクラインに粉末、シロップ、濃縮液、冷凍ピューレ、トッピングを追加するだけで限定商品を作れます。厨房で長時間の仕込みや特殊な調理技術を必要としないため、初回提案として受け入れられやすい食材です。日本食品輸入企業は、単品の原料ではなく、1杯あたり原価、推奨レシピ、トッピングの組み合わせ、季節別メニュー名、写真映えする提供例をセットにして提示すると、バイヤーや外食オペレーターが採用判断をしやすくなります。

 

3. 抹茶・ゆず・茶系フレーバーの商機

抹茶はすでに米国で広く知られていますが、今後の商機は「抹茶そのもの」ではなく、抹茶をどう飲みやすく、日常的に、かつ少し上質に見せるかにあります。Food & Wineが示した内容では、飲料は味だけでなく、色・層・泡・食感・カスタマイズ性・SNS上の見え方まで含めた商品だと強調しています。抹茶は鮮やかな緑色、茶文化との結びつき、カフェインを含むがコーヒーとは違う印象、和のストーリーという複数の価値を持っています。ただし、苦味や粉っぽさは米国の一般消費者にとって障壁になり得ます。輸入事業者は、グレード別の使い分け、甘味との相性、植物性ミルクとの安定性、アイス提供時の沈殿、色保持、酸味素材との組み合わせなど、採用側が不安に思う点を先回りして説明する必要があります。

ゆずは、抹茶とは違う形で入口商品になれます。米国ではレモン、ライム、グレープフルーツ、オレンジの文脈がすでに強く、ゆずは「柑橘の延長」として理解されやすい一方で、香りの複雑さによって差別化できます。ゆずソーダ、ゆずレモネード、ゆずジンジャー、ゆず茶、ゆず入りノンアルカクテルは、飲料店にもレストランにも提案しやすいでしょう。さらに、ゆずはドレッシング、ポン酢、ホットソース、マヨネーズ、デザートソースにも展開できます。飲料をきっかけに、調味料や加工食品へ商談を広げられる点が重要です。

茶系フレーバーでは、ほうじ茶と玄米茶にも可能性があります。抹茶よりも色のインパクトは弱いものの、ほうじ茶はロースト香、玄米茶は香ばしさと軽い穀物感を持ち、甘すぎる飲料に疲れた消費者に提案しやすいと考えられます。カフェチェーンや独立系カフェでは、コーヒー以外の選択肢を増やしたい需要があるので、日本茶を「健康っぽい」だけで売るのではなく、ロースト、ナッツ、キャラメル、バニラ、オーツミルク、コールドフォームなど既存の米国語彙と接続することが大切です。

 

4. 食感とカスタマイズが作る購買理由

今週のFood & Wine記事で特に注目すべきなのは、ボバやフルーツジェリーのような食感素材が飲料の魅力として語られている点です。日本食品には、寒天、こんにゃくゼリー、ナタデココ風素材、もち、わらび餅、あずき、黒糖ゼリー、白玉など、食感を作る素材が多くあります。ただし、米国市場でそのまま出すだけでは伝わりにくい場合があります。輸入事業者は、食感を「chewy」「jelly」「crunch」「silky」「popping」など、バイヤーや消費者が理解しやすい言葉に置き換え、用途を具体化する必要があります。

カスタマイズ需要は、SKU戦略にも影響します。単一の完成品だけではなく、ベース、シロップ、トッピング、仕上げ素材を分けて提案できれば、外食側は同じ原料から複数の限定メニューを作れます。たとえば、抹茶ベースにゆずシロップを合わせる、ほうじ茶ラテに黒糖ゼリーを加える、玄米茶ソーダに梅や紫蘇を少量加える、ラーメン店のデザートドリンクとして抹茶フロートを出す、といった展開です。小売では、RTD飲料、粉末スティック、シロップ、冷凍トッピング、家庭用デザートキットなど、利用シーン別に商品を分けられます。

 

5. 輸入事業者が準備すべき商品設計と営業資料

輸入事業者がこの機会を活かすには、単に「日本で売れている商品」を並べるだけでは不十分です。米国のバイヤーや外食事業者は、味の面白さだけでなく、供給安定性、アレルゲン、保存温度、賞味期限、1食あたり原価、労務負荷、スタッフ教育、SNSでの説明しやすさ、既存メニューとの相性を見ています。営業資料には、少なくとも推奨用途、最低ロット、保管条件、原価試算、試作用レシピ、英語のメニュー表記例、アレルゲン・成分情報、想定チャネルを入れるべきです。

特に抹茶や茶系素材では、品質差をどう説明するかが商談の肝になります。高級茶としての産地や製法を強調するだけでは、外食チェーンには伝わりにくいことがあります。チェーンやカフェ向けには、色の安定性、溶けやすさ、ミルクとの相性、オペレーションの再現性を示す方が有効です。一方、専門店や高級小売向けには、産地、品種、製法、香り、ストーリーが価値になります。同じ抹茶でも、チャネル別に提案の言葉を変えることが重要です。

 

6. 具体的な次のアクション

第一に、飲料向けの日本素材を「すぐ試作できるセット」に再編してください。抹茶粉末、ほうじ茶粉末、ゆずシロップ、黒糖ゼリー、寒天トッピング、メニューカードを一つの試作用キットにすると、商談の速度が上がります。第二に、1つの原料から3つ以上の用途を示してください。ゆずならドリンク、ポン酢ドレッシング、デザートソース。抹茶ならラテ、ソフトクリーム、焼き菓子。第三に、限定販売の切り口を準備してください。夏なら炭酸やフローズン、秋ならほうじ茶や黒糖、冬ならホットラテやデザートと組み合わせる提案ができます。

第四に、SNSで説明しやすい短い英語表現を用意してください。たとえば「yuzu citrus refresher」「roasted hojicha latte」「matcha jelly cloud drink」「seaweed taco shell」のように、味と体験が一目で伝わる言葉が必要です。第五に、過度な確実性を避けてテスト販売を前提にしてください。今週の報道は需要の方向性を示しますが、全米で同じ速度で広がる保証ではありません。地域、価格帯、店舗業態、既存顧客層によって反応は変わります。だからこそ、少量導入、期間限定、共同試作、販売データの回収という順序が現実的です。

日本食品を探す企業にとって、umamill株式会社のように約7,000SKU規模の幅広い商品群を扱うパートナーは、こうした試作と比較検討を進めるうえで有効な選択肢になります。抹茶、ゆず、茶系素材、トッピング、海苔、調味料などを単体ではなく「米国のメニュー機会」に合わせて見比べることで、バイヤーへの提案はかなり具体的になります。重要なのは、日本らしさを守りながら、米国の飲用シーン、価格感、オペレーションに翻訳することです。

 

 

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Source References / 出典

Welcome to the Gen Z-Fueled Golden Age of Fast Food Drinks | Food & Wine | July 26, 2026
https://www.foodandwine.com/fast-food-chains-specialty-drinks-trend-12024991

Eater World's Fare Was a Global Celebration of Food and Soccer | Eater | July 23, 2026
https://www.eater.com/press-room/975492/eater-worlds-fare-was-a-global-celebration-of-food-and-soccer

New York City's Fro-Yo Craze Is Still Going Strong | Eater NY | Updated July 22, 2026
https://ny.eater.com/news/412443/nyc-new-restaurant-openings-july-2026